大腸カメラ検査の重要性

大腸カメラ検査は、大腸の粘膜を直接観察することで、大腸がんをはじめとした様々な疾患を発見することができる検査です。疑わしい病変やポリープを発見した場合は、一部採取・切除を行って病理検査を行います。病理検査とは、疾患が疑われる組織の一部や切除した組織を詳しく観察することでどのような疾患であるかを調べる検査です。当院では、癌プロ修了+内視鏡専門医が診療や内視鏡検査を担当しています。病理検査によってがん細胞が見つかった場合は、がんをすべて摘出したか、がんの深度はどの程度か、リンパ節や静脈などにがん細胞が転移していないか、がんの種類や性質などをご説明し、今後の治療方針までしっかりとサポートいたします。大腸がんの発症リスクが上昇し始める40歳を目安に大腸カメラ検査を受けることをおすすめしています。
大腸カメラ検査でわかる主な疾患
- 大腸がん
- 大腸ポリープ(大腸腺腫)
- 大腸憩室症
- 感染性腸炎
- 虚血性腸炎
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 痔
など
なお、お腹の張りや腹痛、下痢、便秘などの症状が続いているにもかかわらず、大腸カメラ検査で異常が見つからない場合、過敏性腸症候群(IBS)の可能性があります。
大腸カメラ検査でわかる病気
大腸がん
大腸がんは、早期に発見して治療することで完治が可能な病気です。ほとんどの大腸がんは大腸ポリープから発生します。そのため、大腸カメラ検査で、前がん病変の大腸ポリープを発見した場合は、その場で切除することで、大腸がんの予防につながります。早期の大腸がんや大腸ポリープには自覚症状がほとんどないため、発見するためには定期的な内視鏡検査が必要です。また、便潜血検査では、進行した大腸がんであっても陰性になることもあります。反対に、便潜血検査が陰性であっても大腸がんがないとは言えません。そのため、大腸を直接観察できる大腸カメラ検査が重要です。
大腸ポリープ(大腸腺腫)
大腸ポリープは、自覚症状は乏しく、多くの場合大腸カメラ検査で発見されます。大腸がんを発生させる可能性が高い腺腫の大腸ポリープが見つかった場合は、その場で切除することが可能です。ポリープが大きい場合や、ポリープの数が多い場合は、連携する医療機関を紹介いたします。
大腸憩室症
憩室とは、ポケット状のくぼみのことを指し、大腸憩室症は大腸の粘膜に憩室が形成されている状態です。憩室自体に症状はありませんが、炎症が生じると痛みや出血が生じます。憩室ができると治らないため、発見された場合は定期的な経過観察が必要です。生活習慣や食生活を改善し、憩室が増えないようにすることが大切です。
虚血性腸炎
虚血性腸炎は、大腸へ血液を供給する動脈の血流がうまくいかなくなることで、大腸の壁に潰瘍や炎症が生じる病気です。急激な腹痛、下痢、血便、嘔吐などの症状が突発的に現れます。動脈硬化や便秘が原因とされ、症状の程度に応じて、一過性型、狭窄型、壊死型の3つに分かれます。正確な診断と適切な治療のためには大腸カメラ検査が不可欠で、潰瘍性大腸炎やクローン病との鑑別も重要です。一過性型の場合、約1週間の絶食と点滴治療での回復が期待できますが、狭窄型や腸の一部が壊死している壊死型では手術が必要になることもあります。必要に応じて、連携している医療機関へ紹介いたします。再発を防ぐためには血圧管理や便秘の改善が大切です。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜の炎症により、びらんや潰瘍が生じる病気です。炎症が直腸から結腸へと連続的に起こり、大腸内で完結します。明確な発症原因はいまだ解明されていません。なお、腸内細菌による影響、自己免疫機能の異常、食生活の欧米化などが関係していると考えられていますが、正確な原因は不明です。発症後は症状がなくても、定期的に内視鏡検査を実施する必要があります。大腸カメラ検査で大腸内の炎症の程度や範囲を直接確認することで、今後の治療方針を判定するために役立ちます。また、長期経過により大腸がんのリスクが高まることが知られており、特に10年以上経過した全大腸炎型では発がんリスクが高く、最低でも年に1~2回の内視鏡検査が必要となります。
クローン病
クローン病は、口から肛門の消化管全体の炎症により、びらんや潰瘍が生じる病気です。病変が連続的ではなく飛び飛びに生じます。また、クローン病は小腸にも病変が起こるため、栄養吸収が阻害されやすく栄養障害になりやすいため、活動期は適切な栄養療法が必要になります。クローン病は潰瘍性大腸炎と似ている病気ですが、治療法が異なる部分があるため、適切に診断することが重要になります。
痔
大腸カメラ検査によって内痔核がみつかることもあります。内痔核は自覚症状が無い場合は特に治療の必要はありませんが、症状が続く場合や痛みがある場合は治療が必要になります。当院では軟膏やジオン注射を行っています。
大腸カメラ検査を行っても症状の原因がわからない場合
過敏性腸症候群(IBS)
お腹の張りや腹痛、下痢、便秘などの症状が続いているにもかかわらず、大腸カメラ検査で異常が見つからない場合、過敏性腸症候群(IBS)の可能性があります。原因ははっきりとわかっていませんが、ストレスなど心身の負担が影響し、脳から腸へ、また腸から脳へ送られる神経やホルモンによる信号が過敏になり、腸の感受性が高まっていると考えられています。過敏性腸症候群の治療は主に生活習慣と食生活の改善です。症状が食事によって悪化する場合は、アルコールや高脂肪食、カフェインなどの刺激物、牛乳や乳製品などの誘因食品をできるだけ避けることが推奨されます。一方、果物、野菜、イモ類など、食物繊維が豊富な食品を適量摂取することが大切です。便秘が問題となる場合は、適度な食物繊維や脂質、水分摂取が必要です。
また、乳酸菌やビフィズス菌の摂取は腸内環境の改善に役立ちますが、場合によっては便秘が悪化することもあるため注意が必要です。さらに、ウォーキングなどの適度な運動はストレス解消に効果的で、習慣化することで症状の緩和が期待されます。これらの生活習慣や食生活の見直しに加え、必要に応じて薬物療法を併用することもあります。